◆この記事はレオことレオドール(我楽多倶楽部架空部員)視点で記載されています◆

【偵察編1】

 長らくほこりをかぶっていた二眼レフカメラ。RICOHFLEXというらしい。亡き祖父から譲り受けたものである。我楽多倶楽部の寫眞イベントに向けて、このカメラを復活させようと思い至った。
 RICOHFLEXというのは色々なバージョンがあるらしい。まずは自分が持っているカメラがどのバージョンのものなのかを調べてみた。
 上が僕のカメラの六方図だ。調べてみると、リコーフレックス ニューダイヤ セイコーつきらしいことが分かった。でも資料とひとつ違うところがある。資料にはない正面の右下にフラッシュターミナルとう部品があるのだ。同じバージョンでもマイナーチェンジなどをしたのだろうか?
 正面をもっと詳しく見てみた。
 二眼レフは上のレンズがファインダー用で、下のレンズが撮影用だ。ピントを合わせるときは、二つのレンズが固定されている土台が前後に伸び縮みして焦点距離を調節するしくみになっている。
 このカメラは、撮影に関する各種設定機能は全て正面についている。ピントを合わせるノブは左右にあり、シーソーのように上下する。それにあわせて下のフィート表示の針が動く。絞りやシャッター速度を調節するノブは撮影用のレンズの左右にある。数値は上のレンズの上部の窓に表示される。右上にセルフタイマー、下にシャッターレバーとシャッターがある。右下のフラッシュターミナルというのがちょっと良く分からないんだけど、シャッターと同調してフラッシュが光るようにするための、コードを取り付ける場所かな? 謎なレバーがもうひとつ。"MFX"と書かれた左側の赤いレバーだ。
 次は、横から見た図。
 右側は、フィルムが巻きついているスプールを着脱するためのノブが二つ。それからアクセサリーシュー。左側は、フィルム用巻上げノブとフィルムカウンターがある。巻き上げノブには色々表示が書いてあるんだけど、ここで何かを調節するわけじゃなくて、中に入っているフィルムを忘れないように表示するだけなんだとか。
 上部はファインダーになっていて、開けるとすりガラスが見える。ここに像が写る仕組みだ。ピントを合わせるためのレンズや、スポーツファインダー用の窓などもある。
 ここまでが、このカメラについて僕が把握している事項だ。シャッターは動くし、他の機能も特に問題ないように思うけど、唯一にして最大の問題があった。それはレンズが汚れていること。
 レンズ表面もすこし傷ついているように見えたんだけど、メタノールで拭いたら綺麗になった。でもレンズ内部の白濁や水滴、ファインダーの水滴のような汚れはどうにかならないものか。特にレンズの白濁…これ、もしかしてカビとかなのかな?

 オーバーホールに出すとお金がかかるし、かといってこのままにしておいてもまともな写真は取れないだろうし。という理由から、自分でレンズの中身を拭く方法を考えようと思い至ったのであった。偵察その1はカメラの紹介だけで終わってしまった。
 次はカメラを解体できるのか?どんな方法で?それって僕にもできること?という点を中心に報告したい。

【偵察編2】

 レンズが汚れている二眼レフカメラRICOHFLEXを復活させるために、ポイントをいくつか挙げてみた。

1) 汚れているのはファインダーのすりガラスと撮影用のレンズ
2) 汚れが酷いのは、シャッターの裏側にあるレンズ
3) メカの部分は特に不具合は見られない
4) そもそもメカ部分には触りたくない(全く分からないので)
5) カメラメンテナンスに必要な工具はそろっていない

 こんなところだろうか。我楽多倶楽部にはメカメカしたものが好きな部員が多いが、全員が全員、下手の横好きというか、機械系は得意ではない。だから、もしシャッター部分などを下手に開けて壊してしまったら直しようがないのである。しかも光学機器というのは、変にバラしてしまうと光路などがずれてしまって、正常に作動するための調整などが面倒なものである。
 だから、今回の目的は「ファインダーのすりガラスと後ろ側のレンズを拭く」ということで、それ以上は何も望んでいない。目的の部分以外を極力開けずに、汚れた部分だけを取り出して汚れが取れれば大成功なのだ。

 インターネットというのは便利なもので、カメラのレストアを趣味としている人のサイトを参考にできる。「お気に入り」に登録しているいくつかのサイトを巡って、二眼レフカメラのレストアなるものを調べてみた。とりあえず「どこを開ければいいのか?」を知りたい。
 調査の結果、正面の板をはずしてメンテナンスをしているようだった。しかしこの板…正面に張ってある革張りをはがさなければ取れない場合が多いらしい。僕のカメラは結構革の状態が綺麗で、これをはがすのには非常に抵抗がある。ほ、ホントに剥がさなきゃいけないのかな…。恐る恐る、革の端っこをチラっと剥がしてみた。すると、レンズがはまっているダルマ型の金具が革の下に埋まっているのが見えたので、やはりこの金具は革を剥がさないと取り外せないらしいことが分かった。
 …が、参考サイトの正面の金具や板を外している写真は、まだ本体にシャッターがついたままの状態だった。汚れのあるレンズはシャッターの裏側にあるから、金具や板だけを外しても目的の部位にはたどりつけない。シャッターも外せということなのだろうか?そこまでいくと、部分メンテじゃなくて完全解体に近いんじゃ…。それとも、裏側のレンズは正面からではなくて裏側から取り出すものなのか。もしそうだったら、正面の革張りは剥がさなくてすむことになる。
 次に側面を見てみた。側面には両側にそれぞれ4つずつの螺子があった。ファインダー部分を取り外すための螺子と、裏蓋を挟み込んでいる金具を固定している螺子らしい。ファインダーの部分は結構簡単に取り外せることが、参考にしたWebサイトから明らかになっている。
 裏蓋を開いて中を覗いてみた。レンズをはずすための螺子らしきものは特に見つからない。しかし、撮影用のレンズの裏側に、黒いリングと銀色のリングがあり、どちらにも2箇所の溝があった。これって、リングを回すための溝だろうか?このリングが取れれば、汚れているレンズが取り外したりできるんじゃないだろうか?…淡い期待を抱きつつ、全体的な調査はいったん終了することにした。
 ファインダー部分は簡単に取り外せるということなので、4本の螺子をはずしてみた。なるほど、簡単に取り外すことができた。すりガラスの下には、斜めに反射鏡が設置されていて、ファインダー用のレンズを通った光はこの鏡を反射してすりガラスに投影される。反射鏡は周りがちょっと腐食していて、一部傷ついていたりしたけれど、全体的に曇っているなどの大きな汚れはなかった。裏側からレンズを覗いてみると、結構汚れか傷がついているようだった。それはそうと、反射鏡のあるこの空間は結構汚れている。あとで綿棒か何かでふき取ったほうが良いかな、と思いつつ、調査終了。
 さて、取り外したファインダー。すりガラスはどうやら2枚が合わさっているようだ。水滴はこの2枚の間にあるようで、このまま両面を拭いても汚れは取れなかった。すりガラスは細い針金で固定してあって取り外しができそうだったが、針金が結構強く押さえつけていて簡単に取れなさそうだった。でも清掃はレンズほど難しくなさそうだ。
 今回の偵察から、ファインダーのすりガラスは清掃できそうなことが分かった。
 レンズは、内側のリングを外せば取れるんじゃないかと思うのだが、本当にそれで良いのだろうか?やってみても良いけれど、その前に一度、レストアを紹介しているサイトの詳しい人に相談してみるのも良いかもしれない。

【修理編1】

 偵察で得た結果を踏まえ、出来ることからやることにした。

・ファインダーのすりガラスの掃除は、まとまった時間があるときにファインダーの中身も一緒に掃除する
・汚れたレンズを取り外せるか、試みる

 カメラの撮影も、構造的なことも、何もかも素人の僕なので、修理に必要な道具はそろっていないし、知識なんて全然ない。だからコトは慎重に運ばなければならない。

 汚れたレンズを、じいッっと観察。リコーのサイトには『3群4枚構成』と書いてある。表や裏から観察すると、レンズ-レンズ-シャッター-絞り-レンズ、の順に並んでいるようだ。汚れているのは絞りのすぐ裏のレンズだと思う。表裏、どちらが汚れているのかは外からではよくわからない。
 カメラはその種類によりシャッターの位置が様々で、一眼レフなどはフィルムの直前にシャッターがある。だからレンズ交換が簡単に出来るのだ。レンズとシャッターが一体化しているものはレンズシャッターというらしい。このカメラはレンズの間にシャッターがあるから『ビトウィーン・ザ・レンズシャッター』だそうだ。シャッターの前にあるレンズは前群(前玉)、後ろにあるレンズは後群(後玉)という。各レンズの凹凸まではまだわからない。
 中古カメラのお店やオークションでは、「テッサー」だの「ヘキサー」だの「ゾナー」だの、なじみのない言葉が良く出てくるが、これらはレンズの構成につけられた名前のようだ。レンズの断面図がずらりと並んだ図をみると、全く理解できないのに、機能美みたいなものに感嘆する。多分その種類により写り方の特徴があるのだろう。レンズのインプレッションを紹介する記事には「ボケが自然だ」だの何だのという文が載ってるけど、そういう違いって、まだ良くわからない。いずれわかるようになりたいなぁ。

 話はそれてしまったが、僕が持っているRICOHFLEXは時代が古いこともあり、非常に単純な構造の部類に入るようだ。
 今回は手持ちの道具で後玉が外れるかどうかの検討を行った。裏から見た溝のあるリング。あの溝は「カニ目」というらしい。なんでカニなんだろう?とネットで検索してみるも、その由来について言及されているサイトは見つからなかった。とにかく「カニ目」を回すには「カニ目まわし」が必要で、高価な専用の道具もあるようだが先の細いペンチなどで代用できるということがわかった。
 先の連休で学校の近くに開店した巨大なホームセンターで、「内パス」という内径を測る道具を購入した。ぱっと見、カニ目に丁度はまるくらいの太さに見えたのだ。あとは、精密ドライバーと各種ピンセットは既に持っているので、それらを机にずらりと並べて作業を開始することにした。
 カメラの裏蓋を開いてみる。カニ目がついているリングは2つ見える。どちらを先に、どの方向に回せばいいんだろう?とりあえず内パスを溝にはめ込んでみた。
 …ちょっと太すぎたようだ。あと0.3ミリくらい細ければ入るんだけど。
 うまくすればちょっとした引っ掛かりで回るかと思って、試しにまわしてみた。でも堅くてだめだった。ちょっと力を入れてみた、ら、パスが滑ってしまった。これ以上やると

・溝がつぶれる
・レンズが傷つく
・周りが傷つく

などのリスクが考えられたため、丁度良い道具が見つかるまで、これ以上無理をするのはやめた。そういえばビーズアクセサリーで針金を加工する、先の細いペンチが家にあったはずだ。先が焼いてあるので強度は結構あるはず。次はそれを試みることにした。

しかしどちらにまわせばいいんだろう?

【修理編2】

ビーズアクセサリの針金加工などに使うペンチを使って、カニ目回しを試みた。

答え:内側のリングを反時計回りにまわすと緩む

最初の強い締めさえ緩めれば、リングは難なく取れた。そしてそのリングには、2枚のレンズが合体していた。
白濁していたのは絞りやシャッターに面した部分で、汚れを落とすために、以下の溶剤等を試みた。

・水
・メタノール
・アセトン
・ヘプタン
・DMSO
・蛋白質分解酵素(コンタクトレンズ洗浄液)
・唾液(どこかのサイトを参考に)
・鼻の脂(どこかのサイトを参考に)

そしていずれを試しても、白濁は取れなかった。確かにレンズ表面にあるように見えるのに…。上記溶剤に溶けないものとしたら、あとはポリマーとか?水酸化ナトリウムなどには溶けるものがあるそうだが、アルカリ性溶液を扱うのは危険度高くてちょっと嫌だ。

可能性として考えられるのは、汚れが既にレンズを侵食しているということ。もうこうなったらレンズを磨くしかなく、それは不可能なので諦めるより他ない。ただ、レンズが何かしらのフィルムでコーティングしてあって、侵食されたのがコーティング部分だけだとすれば、それを剥がすなり溶かすなりすれば白濁は取れるだろう。

ここまでくると、自分の手に負えるのかどうか、かなり微妙になってきた。レストアの達人方にアドバイスを求めるか、修理工房にレンズの清掃を相談するか…。

★あとでチハヤに「水酸化ナトリウム、ガラスが溶けるよ…」との指摘を受けた。あまり知識もないのに闇雲に試すのは危険だと思った。

★塩化セリウムという研磨用の材料があるらしい。ガラスを溶かすので覚悟の上で使わねばならないらしい。 ★新宿にある山崎光学写真レンズ研究所というところでレンズの研磨とコーティングをやってくれるらしい。凄腕職人が磨いてくれるらしいが、果たしてこのレンズはそんな職人に磨いてもらう価値のあるものなのか…。試しに一度持ち込んでみようか。

【修理編3】

 僕の手に余る問題を抱えたRICOHFLEXのレンズは、レンズ磨き職人の手に委ねることになった。

 新宿の西にある山崎光学写真レンズ研究所というところに、取り出したレンズと、本体と、革カバーを持参することにした。とりあえず電話で問い合わせると奥さんが出てこられて、職人は外出していていないと云う。翌日の朝に電話をしてからカメラを持ってきてくれと云われた。
 翌日の電話では職人自らが電話対応してくれて、持ってきてください、見ます、とのこと。梅雨に入って湿気の多い街の中を、総武線の大久保駅から15分くらい歩いて研究所に向かった。